遺言書の効果は絶対?相続における遺言のアレコレ

遺言書とは

遺言書という言葉は、誰でも一度は聞いたことがあるかと思います。しかし、実際に見たり、書いたりする事は実生活ではほとんどないため、内容について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?

遺言書とは、自分の財産を死後に誰に相続させるか、相続財産と割合を決めることができる、法的に効果のある文書のことです。正しく書かないと無効になるため、遺言書の作成を弁護士に依頼する方も多いです。

遺言書を書く機会なんて、おそらく一生に一度か二度くらいでしょう。弁護士や専門職についている方でなければ、正しい遺言書の書き方を知っている人は少ないはずです。

今回は相続における遺言書の書き方、効果について紹介いたします。親御さんが無くなる際には、遺産相続の話題は必ず出るかと思いますので、是非、参考にしてください。

法定相続よりも強い遺言書

原則は遺言書どおり

遺言書は法定相続よりも優先されます。言葉の意味からは,法定相続の方が強そうですが、そうではありません。遺言相続のほうが優先されます。被相続人が遺言書で遺産の引き継ぎについて定めていない場合に,はじめて民法の法定相続の規定が適用されるのです。遺言書があればそちらが優先です。

一口に遺言書といっても3つの種類があります。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)とは、その全文、日付、氏名を自書し、これに印を押したものです。自分で文字が書けて押印できる健康状態であれば、もっともシンプルな遺言書になります。条件としては、

・相続者(遺言書を書く人)が15歳以上であること
・家庭裁判所の「検認」が必要である
・映像や録音による遺言は無効
・夫婦の共同遺言はNG

などがあります。また、押印は実印でなく認印でも有効です。

公正証書遺言

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)は、遺言者が公証役場の公証人に遺言内容を伝えて、公証人が遺言者から聞いた内容を遺言書に書いていく、共同で作っていく遺言書です。

自筆証書遺言に比べ、専門家のチェックが入るので確実性があり、遺言が無効になる事もありません。遺言にかかれた相続財産も明確で、裁判所のチェックも不要です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)は、遺言者が遺言の内容を誰に知られたくない場合に利用する遺言方法です。遺言者が自分で書いた遺言書を公正役場に持って行き、間違いなく本人のものである事を明確に出来るという特徴があります。

デメリットとしては、公証人も内容を確認できない、専門家のチェックがないので不備がある可能性がある、被相続人の紛争の原因になる可能性がある、などがあります。

遺留分とは

遺留分が保証される相続人

遺言書があるとき、法定相続人であっても、財産相続できない場合があります。しかし、相続できないと生活に困る、という人もいます。そのため最低限の遺産をもらうことができます。遺留分とは、法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。

遺留分が保証される相続人は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。基本的には子供と親と配偶者ですが、代襲相続人にも遺留分が認められます。たとえば、法定相続人である子供が被相続人(遺産を残す人)より先に死亡していた場合、その子でもである孫が代襲相続人ですが、孫も遺留分をもらう権利があります。

また、遺留分が保証される相続人であっても相続放棄をしたら、その権利はなくなります。相続放棄は、財産がもらえない、という場合だけでなく、借金も放棄できるので、被相続人に財産が残っていない場合は、有効は方法です。また、相続放棄をすると、代襲相続もおこりません。

また相続欠格者にあたる人は慰留分をもらうことはできません。相続欠格者とは以下のケースにあてはまる人です。

・被相続人を殺害した
・相続人が被相続人の殺害を知っていたが、刑事告訴しなかった
・被相続人に無理矢理、遺言書を書かせた、改ざんした
・相続人が遺言書を隠した、処分した

これらに当てはまる想像人は、相続欠格者となり、慰留分を請求することはできません。しかし、代襲相続人は、欠格にあたる理由がないため遺留分をもらうことはできます。

遺留分減殺請求

遺留分を請求することを遺留分減殺請求といいます。法的に遺留分をもらう権利があっても遺留分減殺請求をしなければ、遺留分をもらうことはできません。

遺留分減殺請求ができる期間は民法第1042条で決まっていて、被相続人の死亡を知ってから1年間、相続が開始されてから10年間行使しなければ、消滅します。

参考:wikibooks
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC1042%E6%9D%A1

また、受け取れる割合も民法1028条で決まっていて、以下のようになっています。

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

参考:wikibooks
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC1028%E6%9D%A1

遺留分減殺請求の手順としては、まずは内容証明郵便で、遺留分侵害者に通知し、その後に話し合いを行うのがよいでしょう。しかし、感情的になってまとまらないケースも多いです。迷ったらまずは、弁護士に相談するのがよいでしょう。

相続させない人も決めることができる

血を分けた肉親であっても、虐待や侮辱行為を継続的に受け、相続させたくない相続人がいる場合もあります。そういう場合は、相続人に相続させないように指定することも可能です。これを相続排除といいます。相続排除申請をするための条件は、以下のいずれかに当てはまることが必要です。

・財産を遺す者を虐待した場合
・財産を遺す者に重大な侮辱をした場合
・相続人となる者が著しい非行をした場合

上記のいずれかに当てはまり、家庭裁判所に申請することが必要です。裁判所から相続排除の判断が下されたら、市区町村の役所に「推定相続人排除届」を提出して適用となります。

しかし、実際には相続排除が認められることはまれです。相続権は相続人に認められる最低限の権利であり、経済的に大きな影響を及ぼしますので、家庭裁判所も慎重になるからです。

また、相続排除は遺言書でもできます。遺言書に相続人を排除する旨を記載し、遺言執行者も指定しておく必要があります。被相続人の死後、遺言執行者が家庭裁判所に排除請求行います。

なぜ遺言相続が優先されるのか

そもそも遺産相続とは

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遺産相続とは、ある人が亡くなった時に、その人の財産を子や配偶者などの親族が引き継ぐことをいいます。遺産相続する目的は、諸説ありますが、簡単にいうと2つに集約されます。1つは、遺族の生活を保障するため。もう一つは、遺産を国が管理・再分配するのは手間がかかるため、の二点です。
相続する権利がある人たちの範囲は法律で決められていて、以下の通りです。

相続人の範囲
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、
次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

第1順位
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。

第2順位
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

また、内縁関係の人は、法的には相続人と認められません。

参考:国税等HP:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4132.htm

相続の際には以下の4つのポイントに注意して行いましょう。
・相続財産は何か?
・誰が相続するのか?
・相続税は払えるのか?
・分割の割合をどうするのか?

仲の良い肉親でも、遺産相続となると感情的な対立に発展することは、よくあります。無事に相続を済ませるためには、「まとめ役」が必要です。肉親同士だと公平でない、と思うのであれば弁護士など第三者の人間に任せたほうがいいでしょう。

遺産の所有者の意思を優先させる原則

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遺言書や相続などを定めているのは民法です。民法には三大原則というものがあります。

・私的自治の原則
・所有権絶対の原則
・過失責任の原則

それぞれについて詳しくみていくと、私的自治の原則は、個人は社会生活において自己の意志に基づいて自由に契約を締結でき、国はできるだけ干渉しないとするもの。

所有権絶対の原則は、所有者はその所有物を自由に使用・収益・処分することができ、国や他人が侵害することができないとするもの。

過失責任の原則は、損害の発生について、行為者に故意または過失がある場合に限りその損害賠償責任を負うとするもの。

「所有権絶対の法則」の考え方からいくと、所有物をどう処分するかは個人の自由です。そのために遺言書が法定相続権よりも優先されるのです。
いいかえれば、自分の財産をどうしたいか、を明記したものが遺言書となります。法定相続権は補完的な役割と考えてください。

遺言書が法定相続よりも優先される、というのは紛れもない事実です。それは法律(民法)の原則によって定められているから、なのです。

こんな人は遺言書を用意しよう

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遺産相続の際に、遺言書がないと、法定相続が適用されます。そのため以下の条件があてはまる人は遺言書を残しておきましょう。

・自分の財産の配分は自分で決めたい人
・自分の財産を妻に全部あげたい人
・相続権のない人に財産をあげたい人
・相続人同士が仲が悪く、もめる心配がある場合

子供がいなくて、妻と二人の夫婦は、法定相続が適用されると、4分の1は被相続人の兄弟姉妹に持って行かれてしまいます。長年連れ添った妻に全部あげたい場合は遺言書が必要です。また、愛人など相続権のない人に相続させたい場合も遺言書が必要です。

また、子供兄弟同士が仲が悪く、揉めそうな場合は、あらかじめ遺言書で相続の割合を決めておけば、揉める心配は解消される可能性があります。たとえば、再婚した後妻には相続させない、などしておけば、仲の悪い子供は納得する、というようなケースです。

法的に効力のある内容

遺言書には何を書いても認められる、というものではありません。
前述の通り、遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あります。
公正証書遺言は、公証人が作成してくれるので心配はないですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、自分で作成するため、無効になる内容を記載してしまう可能性があります。

遺言書に記載しえ法的効力がある項目は民法などによって限定されています。大きくわけると3種類です。

①財産に関する事項
②身分関係に関する事項
③遺言執行に関する事項

財産に関する遺言事項とは、相続分の割合を指定する、特定の人に財産を遺贈する、などです。身分関係に関する事項は、子供の認知、未成年後見人の指定などになります。遺言執行に関する事項は、墓や仏壇を引き継ぐ人などを指定します。

「葬式不要」、「○○にはうちの敷居をまたいで欲しくない」といった記載は法的な効果はありません。あくまでも故人のお願いという形でとらえ、その内容を執行するかどうかは相続人たちの判断で行ってください。

まとめ

遺産相続は、実生活において馴染みがないため、内容や法律について詳しくない方がほとんどです。知らないために、相続させたくない肉親に権利を与えてしまったり、長年連れ添った妻に全財産を相続させるためには、遺言書が必要だったりといくことを知らない方も少なくないでしょう。自分で築いた財産を自由に相続させるために、あるいは残された遺族が生活に困らないように、遺言書は早いうちから作成しておくことをオススメします。

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