相続税対策に有効な不動産所有型法人

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不動産所有のカタチ_法人のモノにする?

相続税対策の1つとして、個人所有の不動産を法人のモノにするとう手法があります。
法人のモノするとは、法人が「所有」するのか「管理」するのかにより、不動産所有型法人と不動産管理型法人と呼ばれます。この手法の目的を一言でいうと、個人所得よりも法人所得のほうが、税負担が安くなることを目的としています。
法人所有のカタチにする要因は、歴史的にいうと個人所得の最高税率が所得税、住民税を合わせると、93%であったのに(昭和50年前後)対し、法人税は法人住民税とあわせて47%であったことが要因でした。現在は個人の最高税率は住民税とあわせて、55%となっています。
また、補足的なことですが、ここでいう「法人」とは、民法法人や公益法人等のみを指すわけではありません。むしろ、もっと一般的な株式会社や合同、合資、合名会社を指します。なお、有限会社は株式会社の一形態です。

不動産所有型法人と不動産管理型法人

不動産を法人のモノにする形態として、所有型と管理型があるということは既に説明しました。所有型とは要するに、登記簿上の所有者を法人名義にするということです。管理型とは、登記簿上の名義は個人のままで、その不動産の管理を法人に委託するということをいいます。

不動産所有型法人とは

不動産所有型法人とは、個人所有の不動産を、法人所有のカタチにして、この法人のモノとすることをいいます。不動産所有型法人にする場合には、法人所有のカタチにするので、登記簿上の所有者も個人から法人へ変更します。この「変更」というのが曲者で、単純に名義を変更するわけにはいかず、原則的には「売買」によって変更する必要があります。
このことを、登記の世界では「所有権移転(共有の場合は「共有者全員持分全部移転」)」と呼びます。また、「売買」を原因として、名義を変更する場合には、実際に売主と買主の間で、金銭の授受が必要です。
「売ったことにする」などの場合、これを「売買の仮装」または「仮装売買」と呼びますが、現行民法94条(改正民法同条)によりその効果は無効となります。つまり、売買の事実がなかったこととなります。
また、民法上はこのようにとらえますが、税金の話はまた別の捉え方をします。税金の考え方は、実質的受益者に対し課税される方向です。つまり、売買の事実が存在しない場合、「贈与」として、贈与税を受益者である法人が負担することになります。

不動産管理型法人とは_所有型との違い

不動産管理型の法人とは、その目的を個人の所有する不動産の管理維持を行うことを目的とします。この形態を選択する理由は、前述の所有型法人にするには売買による金銭の授受が必要で、対象となる法人にこの財産的な負担に耐えられない場合です。

この形態の場合には、不動産の登記名義人の個人からその不動産の管理業務の委託を受けて、賃料の回収等を個人にかわって行います。なお、他人のために賃借の代理を行う行為は宅建業法の枠内に入ります。つまり、賃貸の仲介等、他人のために媒介をするためには、宅建業法上の許可が必要となります。
賃貸物件の管理業務は宅建業法上(宅地取引業法2条2号参照)の業務に該当しません。しかし、管理業務を超えて業務を行うと、宅建業法上の業務になり、この許可を得ないで業務を行った場合は強力な罰則規定(宅地取引業法79条:3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれの併科)があります。

また、管理型の注意点としては、所有する個人が管理料を多く支払すぎると、同族会社の行為・計算の否認(所得税法157条、法人税法132条)を発動されるリスクがあります。この制度を簡単にいうと、通常の相場以上に管理料を支払った場合、意図的に税逃れをはかったと考慮されて、その差額分に課税され、結果として個人と法人とで2重に課税されるということです。

法人化する理由_法人にするとオトク?

「法人化する」とは、不動産の所有形態として、所有型か管理型のいずれかに変更するということをいいます。
世間では、法人化すると、「法人の税率の方が個人の税率よりも安いので、法人化したほうがおトク」との説、あるいは認識があるようです。
しかし、実際にはケース・バイ・ケースで、個別の事案によります。簡単に説明すると、一般論として、一定以上収益性の高い不動産であった場合(課税所得が500万円を超える程度)、法人所有の方がメリットがある可能性があるといえます。

また、そもそも法人化の前提として、法人を設立した際の注意点がいくつかあります。
一般的に、法人が不動産の所有の形態をとる前提として、会社の設立を行う必要があります。
ここで、会社を設立するには、設立の際に登録免許税と呼ばれる税金が必要となります。この税金は、最低でも、株式会社の場合には15万円、持分会社(合名、合資、合同会社)の場合には6万円必要となります。また、株式会社の場合、紙で定款認証を行う場合には、印紙代と認証費用の両方がかかります。
また、法人を設立した場合には、当然に法人住民税というものが課税されます。
法人住民税は、税割り部分と均等割り部分があります。税割り部分については、法人が赤字の場合は納める必用はありません。しかし、均等割りの部分に関しては、最低でも7万円を納税する義務があります。
さらに、株式会社という形態をとった場合、役員に「任期」という概念が存在し、この任期に応じて、法人の変更登記を法務局に申請する必要があります。この登記申請は、会社法上の義務(会社法907条、967条参照)であって、登記申請を怠った場合には、100万円以下の罰金が科せられます。
以上みてきたとおり、「法人にするとオトク」と安易に考えてはいけないといえます。

不動産所有型法人を設立する場合の注意点

ここまで説明してきたとおり、安易に不動産を所有する目的で法人の設立を考えることはお勧めしません。そもそも、事業を行っている実態のない企業を設立すること自体、あまり褒められたものではありません。
法人を設立することの本来の目的は、労働資本等の社会的資本を集約し、経済的効率を改善するという目的があります。少し横道にそれますが、この目的は、アダム・スミスから始まる分業による経済合理性の追求に由来します。個人で行うよりも、個人を法人の傘の下、その傘下に収め多数の個人が有機的に活動するほうが、より経済的で効率的だとする考え方です。つまり、きちん事業を行う実態がないのに法人の設立を行うことにどれほどの意味があるのかという問題です。

また、こうした理念上の問題のほか、現実問題としては、税金の問題や会計帳簿の作成義務等、法人であるが故のさまざまなコストが必要となります。
ただし、メリットとしては、個人が事業として不動産の賃貸を行って得た所得に対する必要経費について、かなりシビアですが、法人はかなりどんぶり勘定だという点です。
きちんと事業性のある計画を立て、これにより継続的に収益を高めていくのであれば(「ゴーイングコンサーン」の理念)、不動産の所有形態を法人化することの意義は大きいと考えられます。

不動産所有型法人が相続税対策になる?_その真偽

不動産所有型法人が相続税対策になるかどうかは、一般に、事業規模として、法人化すべき事業規模かどうかという点がポイントとなります。事業規模として非常に小さく、例えば、単に所有する土地を駐車場として、他人に賃貸する程度の事業規模であれば、この手法での節税を見こめる可能性は小さくなります。
事業規模が小さいのであれば、個人の所有のままにして、個人の居宅の一部を貸している形態のほうが、小規模宅地の特例の控除を利用でき、節税になる場合があります。
また、目先の情報に惑わされて、右往左往するくらいならば、まず、遺言書を作成するということをした方が賢明と考えられます。相続税の問題も確かに税金の問題で重要ですが、遺言書を書かずに死亡されると、厄介になる事案は非常に多いので、まずこちらの問題に対処すべきでしょう。

まとめ

相続税の節税対策の1つとして、所有形態の法人化があります。
法人のモノにする形態としては、不動産所有型法人と不動産管理型法人があります。法人(会社)の資金が不足している、または、バランスシート上許容できない場合には、後者を選択するとういう手段があります。
しかし、そもそも法人を維持するのにはさまざまなコストがかかり、それぞれ一長一短といえます。所有形態の法人化するか否かは、事業規模の大きさと、事業の継続性という観点から現実的に検討するのが良いでしょう。法人を設立するということは、相続税の節税という問題のみに終着しないということです。

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