不動産を持つとかかる固定資産税とは

固定資産税とは

固定資産税とは、その年の1月1日現在における固定資産の所有者に対し、市町村(東京都の場合は23区内は都)が課税する税金を指します。
固定資産とは「土地、家屋及び償却資産を総称」を指します(地方税法341条)。

固定資産税について

固定資産税は不動産取得税や、不動産登記における登録免許税と課税原因が異なり、その所有者の固定資産となっている状態に対し、課税されます。
所有者とは、原則登記・登録されているものを指しますが、土地や家屋の場合、この者が賦課期日より前に死亡している場合には、「現に所有する者」が実質的所有者として、納税義務を負担します。
固定資産について、もう少し説明します。固定資産における土地とは、主に宅地等、事業用地を指しますが、あまり知られていないところだと、塩田、鉱泉地も固定資産に含まれます(地方税法341条2号)。また、固定資産における家屋は住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物を指します(同条3号)。

年の途中で固定資産税を取得した場合

固定資産税の所有者に課税されます(地方税法343条1項)。そして、ここにいう「所有者」とは、賦課期日現在(毎年1月1日現在)における、登記簿上の所有者、または登録上の所有者となります。
つまり、1年(1月1日~12月31日)の途中で、所有者に変更があったとしても、その納税義務者は従前の所有者のままです。仮に固定資産税の支払いを怠ると、従前の所有者に対し、滞納処分がなされます。
一方で不動産取引の現場では、常々、固定資産税の精算が行われています。この固定資産税の精算とは、従前の所有者(売主)が負担すべき固定資産税を、新所有者(買主)が日割計算等で支払うということです。
しかし、こうした精算行為は法律上の義務ではなく、あくまでも不動産取引の慣行上行われていることです。横道にそれますが、こうした事情から精算金は譲渡所得と判断され、売主側から見た場合、固定資産税の精算金は売買代金の一部となります。売主は、譲渡所得の申告の際にはこちらの金額を含めて申告の必要があります。

固定資産税の計算方法

固定資産税の計算の基礎となるのは、各市町村(東京都23区の場合は都)が算定した、固定資産評価額によります。この固定資産評価額とは、市場価格や購入価格を指すものではありません。
もともと、不動産の評価において、建物については、おおむね「1物2価」となっています。
一方、不動産の土地の場合は、「1物4価」とも「1物5価」とも呼ばれています。ただし、全く別々の基準で算定されるわけではなく、土地については、「地価公示価格」または「基準地価額」の70%程度の評価になるように、固定資産評価額は調整が図られています。

固定資産税の計算式について

固定資産税の計算式の基本は次のとおりです

固定資産評価額×税率(1.4%)=固定資産税

原則固定資産の標準税率は、固定資産評価額に対し、1.4%(地方税法350条参照)となります。また、市町村で財政上の必要がある場合は、これを上回る税率を設けることができます。この税率のついては、現在は制限がなく(平成16年度に制限税率を撤廃)、各自治体の財政状況に応じ、負担率を調整できます。なお、納税通知書や、固定資産税の課税明細書を取得した場合に目にする都市計画税については、上限が0.3%と決まっています。
都市計画税に上限があるのは、市街地の整備等を目的とする目的税であることから、制限を設けないと非常に地域差が出やすい部分であり、どこに居住するかにより税負担が異なるという事態を招きかねず、非常にアンバランスとなる可能性があるためです。なお、近年、上下水道の設備の維持費の問題があり、逆に制限税率を上げたという経緯があります。近時、規制緩和し下水道事業に民間が参入できるように検討されているのはそのためです。
ただし、後に記載しますが、固定資産税の算定において、一般には軽減措置が図られています。

固定資産税の評価替えについて

固定資産税価格は、3年に1度その価格の全件見直しをおこなっています。この3年に1度ある評価の見直しのことを「固定資産税の評価替え」と一般に呼びます。
最後に評価替えを行った年度を基準年度とし、原則この価格を3年間据え置きます。
建物の新築、増改築等があった場合は、そのまま価格存在しなかったり、従前の価格であったりすると不都合が生じるので、この基準年度の価格を参考にして、価格の調整が図られます。同様に土地の場合も、土地の分筆や合筆が行われたり、著しい地価の変動があったりした場合は、その評価額の調整が図られます。

本来固定資産の評価は、毎年更新されるのが、適正課税、税負担の公平な分担、さらには租税法律主義の理念に合致します。ただし、現実問題として、これには膨大な事務作業が必要で、各市町村(東京都23区は都)が対応できていないのが実情です。こうした事情から3年に1度評価替えを行うという運用になっています。

固定資産税の税率について

固定資産税の税率は、前に記載したとおり、原則として、固定資産税の評価額に対して、1.4%を掛けた額となっています(地方税法350条1項)。固定資産の評価について特に家屋については、法務局は、建物についての表示登記がされた場合は、10日以内に所在地の市町村に通知しなければなりません(地方税法382条)。
各市町村はこうして通知された情報を基に、各建物の情報を収集し評価します。また、建物を建設したとしても、登記されるとは限らないので、実際に役所の職員が現地に行ったり、航空写真の撮影を行ったりして、評価する情報を集めています。
なお、1人または、1法人に課税される固定資産税の額が、その市町村が課税できる全体の固定資産税の額の2/3を超える場合に、その税率を上げる場合、一定の規制があります(地方税法350条2項)。具体的には、税率について1.7%を超えて課税する場合には、その課税される者の意見を聴かなければなりません(同条2項後段)。これは行政処分における不利益処分にあたるためです。

都市計画税ってなに

都市計画税とは、市街化区域内にある土地、建物に対して課税される税金です。
市町村は、都市計画法に基づいて行う都市計画業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため、市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、課税がされ(地方税法702条参照)、固定資産のうち償却資産には課税されません。
固定資産税が、との市町村の基礎的財政需要を賄うための普通税であるのに対し、都市計画税は市街地を形成・整備するための目的税です。
都市計画税の税率は固定資産評価額に対し、0.3%以下でなければなりません(地方税法702条の4)。多くの市町村(東京都23区の場合は都)は、都市計画税の税率を0.3%としています。ただし、法律上の上限は0.3%ですので、各市町村には地方自治の原則があり、財政自治権がありますので、0.3%を下回る税率の設定も可能です。
なお、市街化区域に指定するか否かは、都市計画法に基づき策定された、各市町村の「都市計画」に基づきます。 

固定資産税の申告について

固定資産には、土地・建物の他に償却資産も含まれます。固定資産のうち土地・建物につき申告が必要なのは、土地や家屋の状況に変更があった場合です。具体的には、いままで更地であった場所に新たに住宅を新築した場合や、従来の住宅を取壊しして、建直しを行った場合、住宅以外の建造物を取壊しして、住宅を新築した場合等がこれにあたります。なお申告が必要となるのは、その年の1月1日現在において「所有」している場合となります。申告期限は同年の1月31日までとなっています。

固定資産において、他には償却資産があります。償却資産の申告は原則として、事業主以外には不要な手続きです。事業主の中であっても償却資産を保有していない場合は不要です。
償却資産とは、事業用資産のうち法人税法または所得税法に認められる償却資産をいいます。不動産に関連するところだと、土地や建物に設置される建築設備がこれに該当します。

償却資産の価格等は、申告及び調査に基づいて決定され、償却資産課税台帳に登録されるという流れになっています。よって、償却資産を所有している場合には、その資産を各市町村(東京都の場合は都税事務所)に申告する必要があります。「所有」の基準はその年の1月1日現在で、申告の期限は同年1月31日までとなっています。また、税率は他の固定資産と同様に、1.4%となっています。
ただし、償却資産について、「内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」(法人税法33条参照)ことが、原則です。
一方で、国税庁通達により、法人税法施行令13条1号から7号までの償却資産については、評価替えによる評価損について、損金計上が可能となっています。

固定資産税の住宅(土地・建物)に対する軽減措置

住宅の評価額、正確には固定資産評における住宅(土地・建物)の評価額にそのまま課税してしまうと、必要以上に税負担が重くなってしまいます。そこで、法律上、固定資産税の軽減措置及び減税措置が予定されています。

軽減措置適用のための条件について

固定資産のうち土地については、住宅用地である場合には、軽減措置の対象となります(地方税法349条の3の2 1項参照)。住宅用地と言えるためには、専用住宅にあたるか、併用住宅にあたるかのいずれかに該当する必要があります。事業用地の場合(資材置場、駐車場、業務用家屋、空き地等)はこれには該当せず、軽減措置の対象外となります。
また、住宅用家屋については、平成30年3月31日にいったん、その軽減措置に期限が切れます。しかしながら、国土交通省の税制改正事項として、2年間延長する予算措置が併せて国土交通省から要請されています。住宅用の家屋とは、戸建の住宅用の家屋、店舗併設の場合はその住宅用の床面積が1/2を超えている必要があります。また、居住用のマンションも住宅に当たります。

住宅用地(住宅のための土地)の特例

住宅用の土地であると言えるためには、 「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの」(地方税法349条の3の2参照)である必要があります。
ようするに、住宅用家屋の敷地である土地が「住宅用地」とされています。
住宅用地における軽減措置は、小規模用宅地かそれ以外の住宅用地かによって、その内容が異なってきます。小規模用宅地とは、簡単にいうと、その敷地面積は200㎡以下である場合です。この場合は、固定資産税の評価額(課税標準額)に1/6をして、おおもとの課税価額を軽減しています。つまり、次の計算式となります。

固定資産税額=(土地固定資産評価額×1/6)×1.4%

住宅用地が小規模宅地ではない場合は、上記の計算式と同様に考え、固定資産税の評価額(課税標準額)に1/3をしたものに税率の1.4%を掛ける方式となっています。

新築住宅の減税措置

まず、新築住宅に関する軽減措置は、地方税法の本則ではなく、附則に根拠があります。つまり、法制度として、住宅用地の場合の軽減措置と制度の基本がことなります。住宅用地の場合のように法改正がない限り、継続される負担軽減措置ではないことをご注意ください。
新築住宅の減税措置は、平成30年3月31日をもって、いったん終了します。ただし、前に記載したとおり、国土交通省から税制改正の要求がされていますので、一応、減税措置が延長される見込みです。この点ご注意ください。

新築された住宅の床面積につき、120㎡以内を上限として、その住宅建物の固定資産税額が1/2となります。住宅用地と異なるのは、固定資産税評価額を1/2とするのではなく、税額を1/2とします。具体的な計算式は次のとおりです。

固定資産税額=(建物固定資産評価額×1.4%)×1/2

上記減税措置は、税額を戸建の場合は3年間(マンションの場合は5年間)減額するというものです。なお、長期優良住宅の場合には、一般の住宅の場合とことなり、新築住宅特例が従前のものより減税期間が延長される見通しです(適用期間を延長(戸建:3年→5年へ延長、 マンション5年→7年へ延長)。この点は大きな改正点といえます。ただし、長期優良住宅の適用を受けるためには、建築の施行前から入念な打ち合わせが必要など、時間とコストがかかるものです。費用と時間及びコストのバランスを考えて、選択肢の一つとお考えください。

土地に対しての評価額について

古来より、経済取引の対象となる物には、価格がつけられた上で取引され、市場主義経済の浸透した現在社会においては、市場経済の基づく需要と供給のバランスにより、「市場価格」が形成されます。ところで、不動産は経済取引の対象となる中で、最も価値のある実物であって、民法上の物件の対象(客体)となる重要な財産です。この不動産の価格には、日本ではとりわけ土地の場合について、「1物4価」とも「1物5価」とも呼ばれています。つまり、1つの物(土地)にいくつもの価格があるということです。このあたりが、一般の方を混乱させる要因のようです。

実勢価格(市場評価額)

一般に皆様が耳にされる価格の「相場」を指します。例えば、「○○駅前の立地だと、坪単価は何百万円」といった部分による価格です。一般に、広告等で表示される価格がこの価格に近いといえます。

公示地価_「地価公示価格」

公示価格とは、算定の主体が国土交通省であって、地価公示法に基づき、「都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的」として算定される価格です(地価公示法1条)。

毎年、1月1日現在の標準地における「正常な価格」を公示することにより、土地不動産取引において、一定の指標を示し、また不動産鑑定士による評価の基準の価格となります。なお、公表日は毎年3月下旬となっています。

標準地の鑑定評価を行う不動産鑑定士は、標準地における「正常な価格」の算定には近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案してこれを行う必要があります(地価公示法4条参照)。これにより、実勢価格についての価格決定の要素を、ある程度取込むことができ、無秩序な土地不動産価格の相場の高騰に一定の歯止めをかけています。

基準地価_基準地価格

基準値価格とは、算定の主体が各都道府県知事で、前に記載した地価公示価格と同様の趣旨で算定される土地不動産の価格をいいます(国土利用計画法施行令9条参照)。また、この価格の算定には、1人以上の不動産鑑定士が関与し、基準地の標準価格を算定します。なお、物価の変動に応ずる修正率の算定には、総務省統計局が統計結果と、消費者物価指数のうち全国総合指数、及び日本銀行が統計調査の結果に基づき作成する企業物価指数のうち投資財指数を参考にします(国土利用計画法施行令10条参照)。
この価格は知事が毎年7月1日時点の基準地の標準価格(基準地価格)を判定するもので、昭和50年以降、毎年実施しているものです。地価公示価格は都市近郊の土地の評価を算定するのに対し、基準地価格は「自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域」であることから、その基準地は都市部に限定されず、公示価格から漏れた地域の価格の形成に寄与しています。

路線価

路線価とは、算定の主体が国税庁であって、主に相続や遺贈、または贈与により取得した土地の、相続税または贈与税の算定の基礎となる財産評価基準を算定するために国税庁が毎年1月1日時点の価格を、その年の7月1日に公示される価格をいいます。また、別のいい方をしますと、市街地を形成する路線を基に、その路線に面する土地の1㎡当たりの評価をした価格をいいます。
主に路線価を用いる場合とは、相続等があった場合の相続税の申告のための財産評価の基礎として用います。なお、財産評価基準算定の基礎となる路線価は、地価公示価格の概ね80%になるように価格が調整され、横道にそれますが固定資産税評価額については、地価公示価格の70%になるように調整がなされています。

価格は全部バラバラか?

上に記載したそれぞれの価格の基準は、それぞれバラバラとなるのでしょうか。答えははっきりと、「ノー」といえます。まず、実勢価格は除外するとして、国または地方公共団体は、適正な税負担の実現のために、土地の価格の公示や、その価格の動向の調査、及び公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるようにする必要があります(土地基本法参照。特に13条~18条まで)。また、実勢価格についても、不動産取引を行う者は、土地の取引を行なう者は、「公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない」(地価公示法参照。ただし、都市部で取引をする場合)とする努力規定があります。
よって、それぞれの価格を算定または決定する主体は異なりますが、一定の緩い制限を設けつつ、市民社会で適切な取引が行われるように、相互に連携がなされるように調整されています。

まとめ

固定資産税とは、毎年1月1日現在の所有者に対し課税される税金です。ただし、納税義務者がその土地の所在地の市町村にいない場合、あるいは、国外にいる場合などは、納税管理者を定め、各市町村(東京都23区内の場合は都)に対し、届出をする必要があります。また、固定資産税を滞納した場合は、滞納処分を取られることとなります。
一方で、ちょっとした工夫ですが、建物を新築した場合、12月に完成しそうな場合は、建設作業関係者等に配慮し、翌年1月に登記を行うというものがあります。
また、固定資産税には免税点があります。土地については固定資産評価額が30万円、建物については20万円に満たない場合は、固定資産税は課税されません(地方税法351条参照)。
ご自身で、土地や建物等の不動産をお持ちの方は、本稿をお読みいただき、少しでもご自分の資産について、目を向けていただければ幸いです。

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