遺産分割協議を円滑にすすめるためのお話_円満に財産を分配するには

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遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、主として、被相続人が遺言書を残していない場合に、相続人全員の関与により、相続財産の分割について協議することをいいます。「主として」とは、非常にレアなケースですが、被相続人が遺言書を残している場合であっても、相続人全員の合意により、被相続人の意思とは異なる分割方法を協議することが可能な場合があるということです。
また「協議」という単語から、お分かり頂けるように、原則として話し合いにより協議を行います。

主な遺産分割の3つの手続き

遺産分割の方法としては、協議分割、審判分割、調停分割の3つの形式があります。いずれも、原則は、話し合いを前提とした手続きとなります。また、遺産分割協議を行う意義とは、相続人間の公平を担保するためです。

遺産分割協議_協議による遺産分割

遺産分割協議は、相続人全員で協議する必要があります。この「協議」とは物理的に、同日同場所に一同に会して協議することを示しません。文書等のやり取りで、結果として「相続人全員」の合意が得られれば、遺産分割協議は成立します。
ところで、胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされます(民法886条1項)。
この場合、遺産分割協議は胎児を含めて行われなければなりません。しかし、まだ出生していないので、胎児の母は法定代理人的地位を有しますが、実際に出生していない以上法定代理人ではありません。
このあたりにつき、諸説ありますが実務的には、胎児が生まれたのを確認した後、その代理人と他の相続人との間で遺産分割協議を行います。
また「全員で協議」する必要があるので、行方不明者がいると物理的に協議ができなくなります。この場合は、不在者財産管理人を選任するか、失踪宣告の請求によりそのものの権利関係を確定させます。
不在者財産管理人とは、従来の生活拠点からいなくなり、容易に帰宅する見込みがないときに、利害関係人または検察官の請求により選任される、不在者の代理人です。
一方で、不在者財産管理人の能力・権限は基本的には保存等、維持・管理行為限定されます。このことは、私有財産への不当な干渉を除外する理念が働いているためです。すなわち、遺産分割協議は権限外の行為となるため、あらかじめ家庭裁判所の許可が必要となります。
失踪宣告制度とは、一定期間の生死不明の場合に、所定の手続きをとることによって、その失踪者につき死亡したとみなす制度です。死亡したことがみなされるため、その者につき、あらたに相続が発生することになります。

審判分割_審判による分割

話し合いが整わない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判を請求することができます(民法907条2項)。遺産分割協議の審判を請求すべき管轄裁判所は、「相続が開始した地」に帰属します(家事事件手続法191条)。したがって、一般的には、被相続人の最後に住所地が相続が開始した地となるので、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に管轄権があります。
家庭裁判所による審判とは、一般には判決とほぼ同義と考えられています。家庭裁判所の審判については、法律で不服申し立て(即時抗告)できる場合に限定されて、不服申し立てができます。審判事件は、提出された種々の資料より、裁判官が事実関係を判断し審判を下します。前述の不服申し立ては、審判の告知を受けた日から2週間の不変期間のうちに行う必要があります。
なお、遺産分割の審判書を用いて登記手続きを行う場合には、審判が確定していることを証することを証する書面(確定証明書)の添付が必要となります(不動産登記法63条参照)。
一方で、すぐあとに説明する調停による分割の場合には、調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとするので(家事事件手続法268条1項)、成立とともに確定したことが明らかなので、確定証明書は必要ありません。

調停分割_調停による分割

調停による分割は、裁判官1名と家事調停委員2名を間にはさみ、当事者に話し合いの機会を設ける制度です。民事に関する場合の紛争と同様に、家庭内の紛争について、もう一度冷静に話し合いの機会を設け、当事者に問題の解決を促すことを目的としています。
前述のとおり、成立と同時に確定するので、確定証明書は不要です。
なお、余談ですが遺産分割協議が当事者間で整わない場合には、調停と審判のいずれを先に請求すべきかについては、いずれでも構わないという結論になります。この点、離婚における調停前置主義とは異なります。

その他_遺産分割の方法の指定

上記の3つの遺産分割の方法以外に、被相続人が遺言書で遺産分割方法の指定をすることができます(民法908条)。遺産分割の方法の指定とは、所有不動産を売却して、その換価した金額をわける旨の指定をすることをいいます。
ときどき問題となるのが、「相続させる」趣旨の遺言について、分割方法の指定なのか、指定分割なのかが問題となります。
ようするに、「相続させる」趣旨の遺言は、特段に遺贈の趣旨でない限り、相続人の死亡と同時に、権利の帰属が決まるので、遺言執行者による執行を待つ必要がないということです。
この説明を聞くと「??」というのが一般てきでしょう。簡単に違いを説明すると、特に不動産登記においては、「相続させる」趣旨の遺言がある場合には、相続を原因とする単独申請が可能です(不動産登記法62条参照)。一方で、遺贈の場合には、原則どおり共同申請となります。

相続手続きの手順_遺言の有無と遺産分割協議

これまでみてきたとおり、原則として、遺言がある場合は、遺言に沿って手続きを行い、遺言のない場合には、遺産分割協議を行うこととなります。

遺言書の有無の確認_遺言書捜索

被相続人が死亡した場合、遺言書を作成する場面に遭遇しなければ、遺言書の有無について知っていることは少ないでしょう。遺言書が有無については、遺産分割協議が必要ではない場合が多いので、また、故人の遺志を確認する意味でも、遺言書の捜索は必要です。
遺言書の捜索場所の代表例としては、仏壇の引き出しの中や、貸金庫の中、あるいは屋内に金庫があり場合にはこの金庫の中などを探すとよいでしょう。
また、公正証書遺言の場合には、公証人役場がその原本を保管しているので、こちらに確認をしてみると所在が判明する場合があります。また、生前、司法書士等と付き合いのある場合には、その司法書士が遺言書の正本を預かっている場合もあるので、確認が必要です。

遺言書の検認

遺言の方式には普通方式と特別方式があります。普通方式とは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方式をいいます。特別の方式とは、在船者や、伝染病者のする遺いいます。
公正証書遺言以外の遺言については全て検認という手続きが必要となります。
検認手続きの目的は、ある種の証拠保全作業です。公正証書遺言以外の遺言に関しては、その原本が公証人役場に保管をされていないため、改竄の危険があります。検認手続きはこうした危険を回避する意味合いがあります。

法定相続人の調査_遺言書がない場合

遺言書がない場合は法定相続人を確定させて、遺産分割協議をする必要があります。
法定相続人の調査のやり方は、被相続人の出生(または12歳程度)から死亡に至るまで、間の戸籍が抜けることなく戸籍を集めることです。
「出生から死亡まで」とは何回結婚しているのか、及び子供は何人いるのかについて調査します。「戸籍が抜けることなく」とは、間に抜けがあると、記録の調査としては不十分で、相続人が確定できないということになります。
なお、被相続人が死亡した場合の相続人の順位は、大ざっぱにいうと、①子ども、②被相続人の父母、③被相続人の兄弟姉妹及び妻または夫です。

なお正確に相続権の順位を記載すると、
①被相続人の子またはその子の子(代襲相続人)
②直系尊属
③兄弟姉妹またはその代襲相続人
※配偶者は常に相続人となります(具体的には、婚姻関係にある妻または夫を指します)
※代襲相続とは被相続人の子が被相続人の死亡以前に死亡していた場合を指します。兄弟姉妹の場合にも同様に考えます。

相続財産の調査_負債も含めて調査

相続とは被相続人の権利義務関係の一切合切の全てを引き継ぐことをいいます。従いまして、引き継ぐ財産はプラスのものに限定されず、マイナスの財産、すなわち負債もこれに含まれます。
相続財産の調査に関連し、熟慮期間と相続放棄があります。熟慮期間とは、相続人となる者が、被相続人が死亡したことを知ったときから3か月以内に、被相続人について引き継ぐか否かを判断しなければならない期間のことをいいます。もう少し正確にいうと、熟慮期間内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかをする必要があるということです。なお、単純承認は、基本的にはなにもせず、そのまま相続人が相続を受け入れることをいいます。
相続放棄とは、被相続人の負債が多いとか、気持ちとして相続したくないという場合に、各相続人が個別に家庭裁判所に申述することをいいます(民法938条)。
相続財産の調査の具体的やり方は、預貯金の確認や貸金庫の有無の調査。または、証券会社からの通知の有無、登記済証(または登記識別情報)の有無、納税通知書の確認等により、プラスの財産を探すことができます。負債については、被相続人への郵便物の確認、不動産の登記事項の調査、借用書の有無、被相続人の携帯電話等の着信履歴の確認で、ある程度確認することができます。

遺産分割の協議_遺言書がない場合

相続人の調査が終わり、相続人が確定した場合いよいよ遺産分割協議の手続きにはいります。遺産分割協議の方式については、「全員で協議」以外の要件は原則ありません。従いまして、口頭で協議、電話連絡で協議、またはEメールで協議すること等は可能です。しかし、実務的には、争いが生じる可能性があるので、原則として書面にて遺産分割協議を行います。いわゆる、遺産分割協議書と呼ばれるものを作成をします。
遺産分割協議書の書式に特に決まりはありません。ただし、その内容については、①被相続人の氏名、最後住所及び本籍、②内容の明確性の確保、③相続人による記名押印は最低限必要です。内容の明確性とは、記載内容の相続財産がどの財産か特定できる程度の明確性が必要です。相続人による記名押印についての押印ですが、実務的には実印と印鑑証明書が要求されます。印鑑証明書の作成に期限はありませんが、記名する住所と一致(現住所と一致)する必要があります。印鑑証明書の期限については要求されていません。遺産分割協議に「合意した」という過去の事実を証明し、その真実性を担保できれば十分だからです。協議が順調にいけば、すべての相続人が押印をして遺産分割協議書が完成することになります。これにより、銀行での預金の解約手続きや、証券の名義書き換えまたは売却、不動産の相続登記等が可能となります。

遺産分割協議ができない場合_話し合いが進まない場合

遺産分割協議が首尾よく進めば問題はありません。相続人が被相続人の子と、被相続人の配偶者のみである場合には、もめるという事案は比較的少ないです。一方で、被相続人に子がなく、相続人がその兄弟姉妹となるときは、問題が噴出し協議が難航します。
その場合のそれぞれの言い分は、「判子代が欲しい」、「先祖代々の墓はだれが維持管理するのか」、「分け方が納得できない」等々、さまざまあります。
遺産分割協議が整わない場合には、前述した審判手続か調停手続によって協議を行います。それでも決着がつかない場合には訴訟となりますが、これには長大な時間がかかりますので、お勧めはできません。結局決着まで10年以上かかる場合などもあります。

遺産分割協議で注意すること

遺産分割協議で注意することとは、まず前提として、相続放棄をする必要がないのか一旦立ち止まってから協議をするということです。仮に相続放棄できる期間が経過していても、この遺産分割協議を通じて、「事実上の相続放棄」をすることができます。事実上の相続放棄とは、相続人中の特定の1人に相続財産の権利を集中させ、他の相続人がこれに合意するとういやり方で、事実上に裁判上で相続放棄をした場合と同様の効果を発生させることをいいます。
その他、遺産分割協議で注意をすることは、お互いに自分の利益ばかり主張せず、歩み寄りの精神をみせることです。よくあることですが、もめに揉めて話が右往左往している間に、更に相続が発生し、最早手が付けられないという状態に陥ることがあります。

まとめ

相続手続を円滑に進めるためには、まず遺言書を作成しておくことです。
また、相続が生じると、思いのほか時間の経過が早く訪れます。相続放棄できるのは、僅かに3か月以内です。非常に短い期間ですので、初動が大事なのですが、周囲には不謹慎とのそしりを受ける可能性もあります。
円満に話し合いを進めるためには、それぞれの当事者が協力的になることが重要です。相続とは、いつかは自分にも生じる事件です。その時のことを考えれば、目の前の遺産分割協議に協力するのが賢明ではないでしょうか。相続とは万人に平等に訪れるものだからです。

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