不動産を売却するときに知っておきたい流れと注意すべきこと

目次

不動産の売却とは

不動産売却とは、所有する不動産につき、買主と売買契約を締結し、「売買」を原因として売買代金の授受を行い、その所有権を買主に移転することをいいます。一般的には、売主と買主の意思の合致に基づき、その後の不動産登記の名義変更手続きまでを含みます。
不動産を売却するためには、様々な情報の収集が必要です。その情報の中心は、その売却する地域の不動産の相場と、売却を担当してくれる不動産業者の選定です。また、必ず不動産の取引には登記手続が必要となりますので、基本的な登記の仕組みを理解しておくことも必要になってきます。
このように、様々な情報の確認が必要ですので、不動産売却の具体的な行動に移る前に、ご自身である程度の情報の整理を行い、方向性を確認してから、具体的な行動に移ると良いでしょう。

不動産売却のながれ

不動産を売却する前にまず考えるべきは、その目的です。今回どうして不動産を売却したいのか、一度冷静になって、紙にメモ書きをしてみたり、ご家族と相談してみたりして下さい。
不動産売却のながれを簡単に示すと以下のとおりとなります。

1)不動産売却の目的の確認
  家族が増えて手狭になった、年をとって広すぎる家の管理ができず住み替えしたい、
  あるいは、都会から田舎へ引っ越したい等の目的を確認して下さい。

2)売却不動産(中古市場)の相場の調査
  売却する不動産のある地域の人気どや、建物については、人気の間取り、築年数などが価格を決定する要因となります。

3)不動産会社の選定、依頼

4)売却不動産の販売活動・広告

5)買主(購入希望者)と売却条件の交渉・合意

6)売買契約の締結、代金の支払い

7)決済、不動産登記

8)登記完了≒売却手続の完了
  ※まだ全部が完了というわけではありません。

不動産価格の相場を調べる

不動産の売却において、不動産業者に売却希望価格を伝える場合や、または、不動産業者見積りを依頼した場合に、予想売却価格が提示されますが、適切に判断するために、前提として相場についてある程度知っている(イメージをもっている)必要があります。

不動産価格情報や相場の調べ方

不動産の売却を検討する場合、大切な財産を売却することになりますので、イメージを掴むために、十分に現状の相場についての情報を集めることが重要です。集め方のポイントは以下のとおりとなります。
① 周辺地域の不動産価格 
  ※類似する物件や、近隣で売却の広告が出されている物件の販売価格
② 売却不動産の周辺エリアの販売動向
③ 人気エリアかどうか
④ 新耐震基準の建物かどうか
  ※建築基準法施行令の改正によって変わった、新しい耐震基準の事です。
  昭和56年6月1日以前に建築された建造物はこれに該当せず、売却価格を下げる要因となります。

以上のとおりとなります。
情報の集め方は、主としてインターネットで掲載されている広告から得ることができます。中古の建物については、不動産流通機構や大手不動産会社のホームページからある程度のイメージをつかむことができます。
また、その地域の地価の上昇については、国土交通省が毎年公表する地価公示価格の閲覧や、各都道府県が公表している基準地価額を閲覧するという方法があります。この2つの価格は、現在ではインターネットより誰でも閲覧することができるようになっています。

不動産価格の調査の注意点

まず当たり前な注意点ですが、インターネットで閲覧できる情報を鵜呑みにしないということです。現在はインターネットが非常に発達し、かつては役所に足を運ばなければ閲覧することができなかった、地価に関する情報も、インターネットを通じて、24時間閲覧が可能です。また、インターネットを通じて、各不動産業者の広告や、かつては雑誌くらいでしか掲載のなかった、不動産売却の専門雑誌もインターネットでの閲覧が可能です。
しかし、最後は自分で判断する必要がありますので、すべては判断するための参考資料としてお考えください。また、同一地域の類似物件であったとしても、築年数や実際の家屋の状態、不動産の現況などにより価格が変動しますので、この点もご注意下さい。

不動産売却をお願いする不動産業者を選ぶ

不動産を売却する場合において、どのような不動産業者に依頼するかは、大切な問題です。不動産業者によっては、専門とする領域が異なったり、得意とする営業地域が異なったりします。

不動産業者の選び方

絶対の良い不動産業者の選び方というものはありません。しかしながら、不動産という重要な財産の売却を依頼するわけですので、最低限の信頼関係が置けるような業者である必要があります。そこで、以下にその判断のポイントを例示してみます。
① 問い合わせの電話をした際の担当者の対応が良いか
② 宅地建物取引業者票が事務所の見える場所に掲示されているか
  ※これは最低限のレベルです。むしろ、見えない、見つからない場合は違法です。
③ 営業担当者がノリと勢いだけの調子のよい説明をしていないか
④ 売却する本人の目的や要望を真摯に聴く姿勢があるか
⑤ 売却不動産の良い点だけでなく、マイナスな点もきちんと指摘してくれるか
⑥ 担当者は連絡を密にとってくれるか
⑦ 売却スケジュールを遵守あるいは、スケジュールの共有を行ってくれるか
⑧ インターネット上に悪評が多く記載されていないか
  ※これは参考程度です。一部のサイトは所定の手続きをとることにより、悪評の記載を削除することができます。
以上のとおりです。
これらのポイントを満たしている業者であれば、一定の信頼は置いてもよいと考えられます。また、これらの条件を満たすようであれば、不動産業者の選び方は、インターネットでも、専門雑誌の広告でも、あるいはご近所の不動産業者のいずれでも問題ないと考えられます。

不動産売買にかかる媒介契約の締結

不動産業者に依頼する場合に、多くの場合は売買の媒介契約を結ぶこととなります。ところで、宅地建物取引業法上、媒介契約の他に不動産売買の代理契約も可能です。この場合は、不動産業者が売主の代理人として、売買契約にかかる手続きのほとんどを代行することとなります。しかし、一般的には媒介契約を結ぶのが適切だと考えます。その理由は、売主の代理人となったとしても、登記手続においては、原則として本人が委任状に押印する必要があります。また、近時は通称「反社法」(正式名称:犯罪による収益の移転防止に関する法律)により、司法書士が登記業務を受任する際、厳格な本人確認が義務付けられています。こうした関係上、実際には媒介契約を締結する場合が一般的です。

不動産売却価格の査定価格と不動産業者の関係

売主にとって、売却する不動産の価格の査定がいくらになるのかは重要な関心事といえます。不動産業者にとって、自社が扱う物件の査定価格を適切にすることは、結果的に信頼につながります。また一方で、より高い価格で売却した方が、媒介手数料を高くもらえるので、査定価格を高くしたい(売出価格を高額にしたい)という誘惑が働きます。
こういった意味では、売主側だけでなく、買主側にも仲介の不動産業者に入ってもらった方が、より適正な市場価格での売却が見込めます。
インターネット上では、複数の不動産業者から一度に査定価格を出してもらえるようなものがあります。こうしたものを1つの指標として利用するのも良いでしょう。

査定を依頼する際の注意点

査定を依頼する際の注意点は、査定価格はあくまでも参考価格であるという点です。査定価格とは、中古市場における、売却不動産価格を相場から客観的に判断した場合の価格に過ぎません。ようするに、査定価格がなんであれ、結局は買主(購入希望者)が現れないことには、その査定価格も単なる数字以上の意味は持たなくなります。
また、とりわけ都内における中古市場は相場をあげてきましたが、東日本不動産流通機構のレポートを見ると中古不動産市場における在庫の積み増しが進んでいるにも関わらず、売却の成約件数が横ばいの状態が継続しています。このデータの示すところは、中古市場の相場が下がる局面に入る可能性があり、平成32年に人口のピークを迎えるといわれる東京であっても例外ではない可能性があるということです。
(参考資料 東日本不動産流通機構 平成29年12月度レポート
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_201712_summary.pdf)

不動産売却_「売出し」について

不動産を売出すには、不動産会社の担当者とのコミュニケーションを密に行って下さい。ご自身の大切な不動産を売却するわけなので、その売却の目的に合わせた販売戦略に則り売出す必要があります。全く無関心を決めこむというわけにはいきません。

販売戦略_価格戦略

不動産も一般に流通する商品と変わるところがありません。従いまして、ご自身の思うように売却したい場合には、まずご自身の目的に合わせた販売戦略が必要となります。前に記載しましたとおり、売却不動産の相場を調査することは、この販売戦略を組み立てる上では重要です。販売戦略の中でも、価格戦略は重要な位置を占めますが、早期の売却を目的とする場合には、あまり強気な価格だとなかなか買い手がつかない可能性があります。逆に、ある程度時間をかけてでも高額で売却したい場合には、少々強気の価格設定が有効な場合もあります。

不動産を売却前に確認することについて

売出し価格をいくらにするのか、不動産業者ときちんと連携を取りましょう。
また、補足の注意点として、売買契約においては瑕疵担保責任というものがあります。売買契約を買主(購入希望者)と締結する際に、通常の契約書の文言としては、「現状有姿で引き渡す」との文言がある場合が一般的です。一般論として、この文言の意味はそのまま売却不動産を引き渡せば問題ないということになります。
しかし、不動産の売却前に注意していただきたいのは、故意に(気づいていたのに)マイナスな情報を伝えていなかった場合です。こうした場合、後程大きなペナルティを支払う可能性があり、問題になることもあります。前に記載した売却手続について、登記が完了しても本当の意味では完了ではないという趣旨の記載をしました。その理由のいくつかはこうしたことによります。

販売活動を開始

販売方法については、主として広告の掲載となります。一般的には通常の広告の掲載料はすべて、不動産業者が負担します。しかし、売主が特に特別な広告を掲載するように要求する場合には、追加での費用負担を求められるのが通常です。
当初、不動産業者と相互に連携した価格では、なかなか購入希望者が現れない場合があります。そうして場合、感情的にならず、どういった要因で購入希望者が現れないのか、客観的に不動産業者の担当者と協議してみて下さい。

注意点

入念に所有不動産の売却のために準備をしても、なかか思うように進まないことがあります。逆に想像していたよりも早期に、購入希望者が現れ、もう少し高額で売出せばよかったと後悔することがあるかもしれません。こうした場合であっても、いったんは冷静になって、ご自身が調査した相場からどの程度離れているのか、イメージとどう違うのかを確認してみて下さい。その場合、当初依頼した不動産業者が適切でない可能性もあります。
こうしたことを客観的に判断できるために、事前の相場に対する調査や、不動産業者選びは重要なのです。

購入希望者との交渉について

購入希望者が現れた場合、不動産売却へ向けた交渉が始まります。売却価格もそうですが、不動産をいつにどういう状態で引き渡すか等、詳細な交渉に入ります。購入希望者との交渉は主に不動産業者をとおして行います。

購入希望者と条件を希望する。

購入希望者が現れた場合、売買契約を結ぶまえに、十分に相互に売買契約における条件を交渉し確認をします。マンションなどの区分建物では少ないケースですが、戸建住宅の場合、周辺居住者との境界に争いがないか、確定測量図を備えているかについて確認をし、細かな条件を確認します。条件交渉の代表的なポイントは以下のとおりです。
① 売買価格
② 所有権移転時期
③ 固定資産税の精算方法について
④ 瑕疵担保責任について
  ※一般に売却不動産に隠れた瑕疵(=欠陥)があった場合の担保責任をいいます。
⑤ 売却不動産の地積、面積、あるいは専有面積の確認
⑥ 建物設備がある場合はその補修の有無について
⑦ 戸建を売却する場合は上物の建物の滅失の有無及び、滅失する場合の費用負担

物件情報の提供

売却条件の交渉や売買契約の締結の前提として、物件情報の提供を行います。売却不動産が戸建の場合には、古くからの住宅で、隣地と境界について確認をしていない場合は、通常、土地家屋調査士等に依頼して、境界確認を行います。また、法務局に備わる登記簿と、実測がずれている場合もあるので、測量事務所等に測量をお願いする必要がある場合があります。また、特に隣地との境界については、売却前に確認を怠ると、後々大問題となるので注意が必要です。
また、マンション等区分建物の場合には、耐震基準についての説明、敷地権化されているかの有無についての情報の提供が必要です。また、管理組合がある場合には、組合費など、区分建物の共益費等の説明も必要です。

購入希望者との条件交渉における注意点

購入希望者との交渉における注意点は、大きく2つに分けられます。まず1つは、物件に関する情報を誠意をもって伝える必要があります。基本的には、マイナスな情報も含めて、担当する不動産業者に伝える必要があります。不動産は決して低い価値のものではなく、取扱いには十分な注意が必要ですので、十分に情報を提供することが大事です。
2つめは、絶対に自分で交渉はしないということです。その理由を示しますと、売主が買主(購入希望者)と直接やりとりをすると、窓口が不動産業者とあわせて2つになり、買主側からすると、マイナスな印象となる場合があります。また売却価格や詳細な条件の交渉上、情報のまとまりがないので、窓口が分散することは戦略上不利に働きます。また直接交渉すると、その交渉上の責任を売主(ご自身)が負担しなければならず、何か問題が生じたときに、責任を全て自分が負担することになります。

売買契約を結ぶ

購入希望者があらわれて、条件の詳細についての交渉が概ね完了すると、つぎは売買契約の締結へと移ります。売買契約においては、一般には、売主としての担保責任を負担します。

売買契約の基礎知識

不動産を売却するということは、購入希望者(買主)と売買契約を締結するということです。売買契約とは、契約に一種で民法555条以下にその根拠がある契約です。他に事業者の場合は商法の適用がありますが、ここでは個人間売買を想定していますので、こちらは考慮しません。
一般に売買契約に限らず、契約を締結すると、その効果として、簡単には契約の解除をすることができません。契約書を交わしておいて、「やっぱりやめた」では済まないということです。一度契約書を交わしてしまうと、売主は履行責任や瑕疵担保責任を負担します。履行責任とは、簡単にいうと不動産を売買代金した場合に、売却不動産を引き渡す責任があるということです。
売買契約を締結する前には、いったん冷静になって、再度今回の売却について見直してみて下さい。

売買契約締結のながれ

不動産売買契約において、不動産業者に依頼している場合は、宅地建物取引士に売買契約の内容を説明しながら、売主、買主(購入希望者)と相互に契約内容について確認します。この際に、売買代金にばかり目が行きがちですが、その内容についてしっかりと確認するようにして下さい。売買契約締結の際には、基本的には、売主側の責任として全ての情報を買主(購入希望者)へ伝える必要があります。ただし、直接伝える必要はなく、事前に不動産業者の担当者と情報を共有し、適切な情報提示をするようにして下さい。
また、売買契約締結の際には、その話の進行状況によって、登記をどうするのかという話になります。場合によっては納税通知書の交付を求められますが、個人情報が記載してありますので、固定資産税評価証明書を取得すること勧めます。

売買契約締結における注意点

売買契約締結における注意点を簡単にいうと、十分な情報提供の必要性と、不動産業者との連携の必要性です。不動産売買においては、これまでみてきたように、非常にデリケートで、十分に注意を払っても何が起きるかわかりません。むしろこうしたリスクを回避するために、不動産業者と売却についての媒介契約を結びます。しかし、不動産会社に依頼しているから大丈夫ということではなく、売主自身も主体的に考え、不動産を売却するということはどういう意味を持つのか、再度考えてみて下さい。
また、繰り返しとなりますが、隣地ともめている場合などは、なるべく早期に不動産業者に相談したほうがよいでしょう。売主も買主(購入希望者)もそれぞれが気持ちよく取引ができるようにするのが一番です。

不動産引き渡しについて

売買契約が締結され、首尾よく売買代金を受領した場合には、売却不動産の引き渡しをする必要があります。一般的にはこの引き渡しの完了をもって、売買契約上の義務を果たしたといえます。

売却不動産引き渡しのながれについて

買主(購入希望者)から代金を受領すると、売主は売却不動産の引き渡しをする必要があります。この引き渡しには、当然として、「引っ越し」に伴う退去も含まれます。どの時期に退去するかは、契約条件交渉時、あるいは契約締結時に確認します。通常は、売買日前までに引っ越しに伴う退去は完了させます。
売却不動産の引き渡しには以下のものがあります。
① 占有の引き渡し
  ※売却不動産が住宅であった場合には、退去による占有の引き渡しです。
② 鍵の引き渡し(建物の場合)
③ 公共料金等の精算
  電気・ガス・水道の手続きを済ませることです。補足すると、郵便局への届出も含みます。
④ 登記名義の引き渡し
  ・登記済証(登記識別情報通知)の交付
  ・印鑑証明書の交付
  ・登記委任状の交付
  ・固定資産税評価証明書の交付
※担保権がついている場合は、担保権抹消も含みます。

売却不動産引き渡しの注意点について

売却不動産引き渡しの注意点は、まず、絶対に登記名義を引き渡すということと、物理的にその売却不動産を引き渡すということです。加えて、後に記載しますが、売却した不動産に担保がついている場合には、こちらを抹消の上、引き渡さなければなりません。この2つが守られないと、取引が成立しません。大変な問題となります。
他には、売買代金の受領をしたので、必ずその場で領収書の交付が必要となります。非常に大きな金銭の授受を行っているので、その場で領主書を渡さないと大変なトラブルとなります。
また、売却不動産の引き渡しには、売買契約締結時に確認したとおりに手続きを進めていきます。たまに忘れますが、住民票の移転も忘れずに行っておいて下さい。

そのた売却不動産についての注意点_相続不動産、担保付不動産、賃貸中の不動産

これまで不動産を売却するためのながれを確認してきました。これらの他にもいくつか、注意点がありますので、説明していきます。具体的には、売却不動産がどういう属性または状態にあるかによって注意点が異なります。

相続不動産を売却する場合の注意点

相続した不動産を売却した場合の注意点は、3つあります。ただし、マンションなどの区分建物の場合には必ずしも適合しません。マンションなどにおいて、具体的に隣地との境界や建物の滅失について問題となることが少ないからです。
1つめは、戸建の場合、古くから居住してきた場合が多いので、土地の境界についてあいまいになっているケースが少なくありません。多くの場合、実際に居住していると、隣地の住民が具体的に苦言を呈することは少ないでしょう。しかし、言わないだけであって、実際には隣地の境界を問題と認識している場合は多々あります。
売却前には再度測量と、隣地との境界の確認が必要な場合が多いです。こうした場合は、土地家屋調査士に相談して下さい。
2つめは土地の上に建物がある場合、その建物も含めて売却するのか否かという点です。多くの場合、築年数が経過しているので、取壊しの上、売却となります。ただし、この段階で売却を交渉してくるのは、おそらく不動産業者が多いでしょう。
相続後すぐに更地にしないのは、土地の評価があがってしまう危険を考慮してのことです。
3つめは後に記載しますが、税金の問題です。譲渡所得が出た場合に譲渡所得税が発生する点です。

担保付不動産を売却する場合の注意点_主として住宅ローンが残っている場合

前に記載しましたとおり、売却不動産の引き渡しには、担保権の抹消も含みます。担保を残したままま、売却する方法もありますが、一般的ではありません。一般的な不動産取引においては、設定されている担保権を抹消してから引き渡すのが慣例です。
住宅ローンの残債が残っている場合には、債権者(担当金融機関)に事前に残債弁済の申し込みが必要です。この手続きには最大で1か月程度かかる場合がありますので、早期に手続きをしておく必要があります。
担保権とは主として抵当権となります。ただし、昭和の時代に抵当権を設定する場合は、旧民法395条の規定による短期賃貸借制度の効果を除外する目的で、条件付所有権移転仮登記と条件付賃借権設定仮登記が登記されている場合があります。この場合には、そもそも既に当時の債権者であった銀行が平成の大合併でなくなっている場合があり、手続きが非常に複雑になります。ほぼ素人では対処できないので、司法書士に依頼をして下さい。

賃貸中の不動産を売却する場合の注意点

賃貸中の不動産を売却する場合の注意点は、主として、オーナーが替わることを借主に伝える必要がある点と、敷金の返還義務は原則として買主(購入希望者)に引き継がれるという点です。また、借主に買主(購入希望者)が自分が新オーナーだと主張するには、登記名義の変更をすませておく必要があります。
また、借主にオーナー交替の通知を出すべきは、売主であって、賃貸中の売却不動産については、これを完了しないと、不動産の引き渡しを完了したことにはなりません。また、補足的にいうと、借主が誠実な借主かどうかの情報の提供についても、出来る限り買主(購入希望者)に伝えるのが望ましいです。

税金に関しての注意点_利益ある所に税金の影

不動産を売却する際に忘れてはならないのは税金です。しかしながら、通常の場合、所有する自宅を売却した場合には、税負担が大きくならないように制度設計がなされています。最後にこの税金について簡単に触れます。

譲渡益がでる場合とは_譲渡所得税・住民税

個人が居住用の不動産を売却する場合には、譲渡益が3,000万円を超えるかどうかが分水嶺となります。つまり、譲渡益が3,000万円を控除してもなお残るような場合には、一定の譲渡所得と住民税が課税されることとなります。
なお、いわゆる、住み替えや買い替えの場合には、住み替え費用が売却価格を超えない場合は、譲渡がなかったものとみなされ、課税されません。また、住宅の土地・建物の双方ともに、所有期間が10年を超える場合には「居住用財産の特別控除・経過の特例」及等の特例措置の適用を受けることができます。
制度の趣旨としては、居住用の重要な財産を手放すことに対して、国民感情に沿うように設計されています。つまり、買い替えを行ったり、住み替えを行ったりするための資金を得る目的で、不動産を売却した場合には、なるべく課税しない方向性となっています。

相続後に不動産を売却する場合_相続税との関係

相続が生じると、多くの場合煩雑な手続きや葬儀などの関係で、あっというまに熟慮期間
の3か月が経過し、結局相続する他の選択肢がない場合があります。こうした場合でなくても、通常、親の財産を相続する場合には、その子は既に独立し、別々の生計を営んでいる場合が多いのが現実です。そうなると、親から不動産を相続しても、他に活用方法がないことがあります。しかしながら、こちらを何も考慮しないで、売却してしまうと必要以上に譲渡益が発生してしまい、負担が大きくなります。
制度として、相続加算という制度があり、この制度は納付した相続税の一定割合を不動産の「取得費」として、売却価格から控除する経費に加算できるという制度です。
また、被相続人の子複数人いる場合、その子の間で(兄弟間で)揉めてしまい、結局売却してその利益を分割しようとするものがあります。この場合、結果が同じであっても、換価分割をするのか、代償分割をするのかによって、税金の負担に差が出る場合があります。
このように、同じ結果を求めた場合でも、その過程によって税金の負担が出る場合がありますので、あらかじめ専門家(税理士等)に相談するとよいでしょう。

まとめ

不動産を売却する場合には、他人に丸投げというわけにはいきません。もっともサービスとして、売主側に手間を掛けさせないように、コンサルティングするあるいはディレクションするという仕事は存在します。こうした業務を担っているのは、不動産業者や、一部の士業ですが、忘れてはならないのは、最終的な責任は自分にあるということです。世の中の仕組みは非常に複雑で、1人の個人がこれらの全てに対処するのは事実上困難です。
不動産を売却する際に、不動産業者等に依頼する場合はこうした危険を分散あるいは軽減させるための一手段に過ぎないと心得て下さい。

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