お墓は非課税?相続税の節税になるって本当?

お墓に相続の税金はかかるのか

お墓を相続する場合、その税金はかからないと良く聞くことがあります。しかし、本当にそうなのか、またはどうして税金がかからないのか不安なことでしょう。そんな疑問に対し以下に簡単に説明していきます。

お墓の相続に税金はかかるのか?

お墓の相続に税金はかかりません。お墓は通常の財産権とは異なり祭祀財産に該当します(民法897条)。一般に、墓地はその使用料を管理者(寺・霊園等墓所管理者)へ負担する形式ですので、固定資産税はかかりません。また、自分で購入した土地にお墓を建てる場合も、地方税法の規定により固定資産税は非課税です(同法348条2項4号)。
祭祀財産とは、系譜(系図)・祭具(位牌・仏壇等)・墳墓(墓石・墓地)等を指します。これらは、相続の対象とはならず、慣習に従って、祖先の祭祀を主宰すべきものが承継します。
お墓とは先祖や故人を偲ぶための精神的なものであって、真摯な想いにより建てられ護られるものです。こうした精神的なものや、宗教的なものに関し、行政権が課税権を行使することは妥当ではありません。

お墓は祭祀財産

お墓は祭祀財産に含まれるものであり、相続分や遺留分とは関係がありません。また、相続放棄や承認の適用はありません。従って、相続放棄をした場合であっても、別途承継することができます。承継すべき者とは、慣習に従って、祖先の祭祀を主宰すべき者を指します。慣習が明らかではない場合には、承継者は家庭裁判所がきめます(民法897条2項)。なお、この裁判は、相続が開始した地の家庭裁判所の管轄となります(家事事件手続法190条1項)。また、家庭裁判所は、相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判において、当事者に対し、系譜、祭具及び墳墓の引渡しを命じることができます(同法2項)。
なお、遺骨の所有権は誰にあるのか問題になることがありますが、判例上は、慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属します(最高裁判所判例 平成1年7月18日家裁月報41-10-128)。

他の相続税がかからない財産

その他相続税のかからない財産としては、日常礼拝に使用する物がこれに該当します。ただし、骨董的価値があり、投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります(国税庁HP参照)。
上記のような祭祀財産の他に、相続税のかからない場合のある財産は、①死亡保険金と②死亡退職金があります。それぞれの非課税枠は次のとおりとなります。

①死亡保険金について

死亡保険金とは、被相続人がその保険料の全額または一部を支払って、その相続人が受取人となる場合に課税対象となります。ただし、全ての場合に課税となるのではなく、以下の式により求められる非課税枠以内の金額に、相続人全員が取得した死亡年金の総額が満たなければ、非課税となります。
式)500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
なお、なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はありません。また、法定相続人の中にも養子は含まれますが、そのカウントできる人数には制限があります。相続放棄をした者がいた場合、民法上は法定相続人ではありませんが、税法上はこの法定相続人の数にカウントしても良いことになっています。
注意は、不当に非課税限度枠を広げて、相続税の課税を免れようとする意図のある養子の場合には、この養子の数を上記の法定代理人の数に含めることはできません。

②死亡退職金について

計算式等については、①と同様です。
死亡退職金とは、被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(これらを「退職手当金等」といいます。)を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。支給される名目は何でもよく、その実態として被相続人の退職手当金等として支給される金額がこれにあたります。
(参考 国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4117.htm)

お墓の生前購入は相続税を減らす助けになる?

残念ながら、お墓を購入する資金を現金で残してしまうと、全体として相続税が多くかかる場合があります。多くかかるとは、“お金”には色も名前も記載されていないため、課税する側としては、そのお金の使用目的を区別することが難しいので、一律に「相続財産」として課税されてしまうためです。

お墓を購入するならば生前の方が良い理由

お墓に対して課税されないことは、既に説明しました。お墓を生前に購入するほうが、相続財産を減らすことになるので、生前の購入の方がメリットがあるといえます。たとえば、現金の資産1000万円があったとして、生前にお墓の購入に400万使用したとすると、現金の相続財産は600万円となります。一方で、生前に購入しなかった場合にはそのまま、現金資産として1000万円あることになります。この点についてメリットがあるといえます。

補足説明_相続税の非課税枠とは

相続税の非課税枠とは相続財産全体を足した場合、一定の金額の枠内(原則:3,000万円+法定相続人の数×600万円)であることをいいます。
具体例を挙げますと、標準的な家庭で、夫が死亡した場合、妻と子2人ですので、4800万円までが非課税枠となります。首都圏では、相続財産全体が、この金額を超えてしまうケースが多いかもしれません。しかしながら地方であれば、預貯金をあわせても非課税枠に収まるケースが多いでしょう。
従いまして、上記に説明するように非課税枠に収まる場合には、お墓を生前に購入するのか、または死後に、そのお金でお墓を購入するのかに違いがない場合があります。

お墓の生前購入について注意すること

まずお墓の生前購入について注意することは、その墓地・墓所が生前のお墓を受け入れてくれるかどうかです。全国全て霊園や墓所がお墓の生前購入を容認しているわけではありません。それぞれの宗教、宗派、あるいは管理上のルールによって異なりますので注意が必要です。
お墓を建てる墓地・墓所のルールをよく調べて確認をしておくことも重要です。これを怠ると、後々、管理側と親族とのトラブルに発展することがあります。また、お墓を建てる場所が、将来そのお墓を承継する親族からあまりにも遠方だと、支障が出るということも考慮すべきでしょう。つまりは、お墓にも立地条件を考えるべきだということです。
せっかくお墓を購入しても、死後だれも管理できないような場所にあると、結果的に親族の誰も訪れることができなくなります。

まとめ

お墓は相続財産に含まれないので、相続税の対象とはなりません。お墓の他に祭祀財産に含まれるものも同様に相続税の課税対象ではありません。ただし、骨董品としての価値があるものや、投資の対象となるものは課税される場合があります。先祖伝来の遺物等由来のあるものであれば、投資の対象でないことは明らかなので、課税の可能性は低いでしょう。
お墓の生前購入には一定のメリットがありますが、それぞれの家族の在り方につながる部分があるので、一概にお金の観点のみでは判断できません。
また、生前にお墓を購入することを受け入れてくれる場合と、そうでない場合があるという点も注意が必要です。また、一旦購入すると、費用面では管理費用が生じる場合があるのでこの点もキチンと確認する必要があります。
何事もそうですが、物事をAかBかと短絡的に考えず、ご自身の事、家族の将来の事を考えて判断する事が重要です。

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