支払った相続税が戻る?相続税還付

1相続税は還ってくる可能性がある

相続税を支払う際に、「こんなに高いのか」と感じたことはないでしょうか。
実は相続税を払いすぎてしまった場合、還付を受けることができます。しかしながら、税務署が親切に相続税の納めすぎを指摘してくれることは、ほとんどありません。

1-1相続税の還付とは

相続税の還付とは、前述のとおり、納めすぎた相続税の還付を受けることです。相続税の還付とは、手続の形式として、相続税申告書を更正する手続となることから、「更正の請求」とも呼ばれます。
相続税の還付は、いつでも請求ができるというわけではありません。法定の申告期限から5年以内に限定して、税務署に対して更正請求を行うことにより還付を受けることができます(国税通則法23条)。法定の申告期限とは、相続人が被相続人の死亡したことを知ったときから10か月です。
相続税の還付は、税務署側が教えてくれることはほとんどありません。納税者側から請求しなければならないのは、日本の税制上、自分の納税額を自分で申告するという方式を採用するためです(「申告税方式」)。

2相続税還付の可能性をチェックしましょう

相続税の還付を受けられるのはどういう場合なのでしょうか。
相続税の還付が発生するほとんどの原因は、「土地の不適正な評価」です。土地以外の財産の評価の場合、その評価に差が発生することはあまりありません。因みに、相続税申告をする際には、財産をそれぞれ相続税評価額というモノサシで計算を行います。還付を受けられる可能性があるのは、以下のタイプの土地です。

 不整形地(形がいびつな土地か)かどうか
 間口のせまい土地かどうか
 近隣に比較して広めの土地かどうか(三大都市圏の場合は500㎡以上、それ以外の場合は1000㎡以上)
 小規模住宅地等に該当するかどうか(被相続人が居住していた土地であれば330㎡)

土地の相続税評価を正しくできないのは、土地には価格の種類として5種類あることと、評価額の算出に専門性が必要であることが原因です。つまり、土地の価格と聞くと、一般の方は、売買価格(実勢価格)を想像しますが、相続税評価額は必ずしもこの価格とは一致しません。また、土地を相続税評価に則った方式で算定することも、かなりの専門性が必要なため、正しく評価できず、相続税の納めすぎが発生します。

3相続税還付金額の平均

相続税の還付金額の平均はだいたいどの位なのでしょうか。
国税庁の統計データによると、一件あたり、平均で約1200万円の相続税の還付がされているとのことです。前述のとおり、相続税の還付が生じる原因が土地の評価の誤りによることから、かなりの範囲で土地の価格の評価を間違えると言えるでしょう。
土地の評価には、専門性が必要で、税務の専門家である税理士でも間違える場合があります。相続税を正しく申告するには、相続専門の税理士に依頼することが得策かもしれません。

4相続税の納め過ぎになる理由

相続税を納めすぎとなる理由は、土地の評価を正しくできないことにあります。土地の評価には、一物五価と呼ばれるように、実勢価格、地価公示価格、基準地価格、相続税評価額、固定資産税評価額といくつも評価が存在して、分かりづらくなっています。加えて、通常の税理士では、相続税の申告を行うことが、年間で5件程度であったりするなど、税理士自身も相続税の申告になれていない場合なども原因として考えられます。

4-1土地評価が難しい

土地の評価が難しいことは、何度か触れてきました。土地の相続税評価の基本は、路線価か倍率方式で算定します。
路線価方式とは、その名のとおり、道路毎に価格を設定し、その土地が面している道路の評価がいくらかによって、その土地の評価を算出する方法です。
一方で、倍率方式とは、その土地が面している道路にまだ価格が設定されていない場合に、固定資産評価額に地目等に応じた一定の倍率を乗じて評価する方式です。なお、固定資産評価すらないような場合では、付近の土地の価格を参考価格として算出します。
この他にも、算出方法としては、不動産鑑定士による不動産鑑定評価によるものもあります。しかし、この方法は、税務署で否認されるリスクがあります。
このように、算定方式だけでも、複数存在し、また、どの算定方法が適切なのかは、相続の事案毎にことなります。土地の評価が難しいとは、このように、算定方法が複雑で、かつ、どの算定方法が適切かの客観的な判断が困難な点にあると言えます。

4-2税理士のキャリア

相続税の納めすぎとなる原因には、税理士の経験の不足という側面もあります。平均的な税理士の場合には、相続税申告は年間でも数件あるかないかの状態です。「相続専門」と謳っている税理士であっても、これと大差がないのが現状です。
他方で、少々話しはそれますが、税務署が相続税申告のうち、税務調査に入る場合は全体の20%にものぼり、かつ、調査に入られた場合、80%の確率で追徴課税されています。つまり、税務署が税務調査の通知をした段階で、かなりの確率で、申告漏れの財産が存在していることを把握しているということです。
税務調査の危険を低減するためには、税理士の「書面添付制度」というものがあります。しかし、この制度は、税理士自身が相続税申告の内容を担保する(保証する)という意味を含むため、経験の少ない税理士はこのような対応をとることはできません。個人事務所の税理士であれば、年間20件以上、税理士法人であれば、年間100件以上相続税申告をしているようであれば、相続税申告の経験が豊富だと言えるでしょう。

4-3多く収めても税務署から連絡はない

相続税を誤って多く納めてしまっても、税務署からは連絡してはくれません。
実際に多く納めすぎてしまったか否かについては、ほとんどの場合には、土地の評価の誤りです。しかし、この「誤り」かどうかは、税務署目線ですと、税務署側の考える原則的な評価方法で評価されているか否かで判断されます。
つまり、相続税を申告した側に、有利な評価方法を用いているかについては一切考慮されていません。税務署が考えているのは、法律上、違法ではない限り、税金を敢えて低く徴税する必要はなく、親切に教えてくれるなどということはありません。国はできる限り、多く税金を納めて欲しいと考えている関係上、こうした取扱いは、当然なのかもしれません。

5相続税の還付金の申請手順方法

相続税の還付には、相続を知った時より5年10か月以内に、税務署に相続税申告の更正請求をしなければ、なりません。

前述のとおり、相続税の還付が発生するのは、ほぼ、土地の評価のやり直しとなります。税理士等の専門家以外が、土地の相続税評価をただしく行うことは困難です。気になったら、専門家に相談するのが良いでしょう。

6まとめ

相続税の還付が生じるのは、相続財産のうち、土地について正しく評価できないことが原因です。しかし、例え、納税者側が示した評価であっても、税務署側が否認すると、結局は認められないことになります。その場合は、税金の滞納が生じる危険がありますので、専門の税理士に事前に相談するのが良いでしょう。

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