空家の相続放棄するときに知っておきたいこと

空家の相続放棄は増えている

住むことができない

空き家の状態で相続される不動産は、親の住んでいた実家であるケースがほとんどです。
子どもたちは自身の仕事や家庭の都合で、他の場所で生活をしているなど、相続しても子ども自身は住めない状況だったりして、空き家を相続放棄しようとする人は少なくありません。

費用がかかる

空き家をそのままの状態で相続すると、自分たちが住んでいる家以外にも、空き家の維持費や固定資産税などが余分にかかってしまいます。
売ったり貸したりする場合でも、土地の上に古い家屋が乗ったままだと、かえって価値が下がってしまうことが少なくありません。
さらにリフォームや解体をして価値を高めたとしても、そのための費用や相続税などと天秤にかけると、結果的にマイナスの相続になるケースになることもあります。

空家の相続放棄のメリットデメリット

メリット

相続の方法には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類の方法があり、このうち、「相続放棄」は、最初から相続人ではなかったということにしてしまう方法です。
他の相続人が相続する場合でも、自分だけ相続を放棄するということができ、手続きも家庭裁判所に申し立てるだけなので、簡単です。
ですが、相続放棄をした場合も、「次に相続人になった人が相続財産を管理できるようになるまで、自分の財産を管理するのと同じぐらいの責任をもって管理しなければならない」という民法の規定があります。
簡単に言いますと、「相続放棄した場合も、次に管理する人が出てくるまでは、十分に注意してしっかり自分で管理し続けてくださいね」という意味になります。
つまり、相続放棄をすれば、その空き家は自分のものになることはないので固定資産税を払う必要はなくなりますが、次に空き家を管理できる人が現れるまでは、自分で管理し続けなければならないのです。

デメリット

相続放棄を行うと、空き家だけでなく、他の財産に関しても相続の権利がなくなるため、万が一、空き家以外に被相続人名義の財産がある場合には、それも引き継ぐことができなくなります。
また、一度相続放棄してしまうと撤回できないこともデメリットとなります。

なぜ増えているか?

人が住まなくなった建物は、すごいスピードで劣化していきます。とくに木造の家屋は、壁が崩れ落ちそうになったり、瓦屋根が今にも落ちてきそうになったりと、かなり危険な状態になります。
もし、相続放棄をした空き家が危険な状態になって、もしそれが原因で人にけがをさせたとすると、その責任を問われるのは誰になるのでしょう。
【民法717条】
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う

これは、土地にある空き家など工作物の管理不足によって、他人が怪我などをした場合の責任を定めた条文です。
「瑕疵」とはミスのこと、きちんと管理していないせい(管理ミス)で壁が崩れたりすることを意味します。
空き家が原因で他人にけがをさせてしまった場合は、その空き家の「占有者」が責任を問われることになります。
「相続放棄をしたけれど、次に空き家を管理できる相続人がいない」という状態だと、空き家の占有者として他人に損害を与えたことへの責任を負う可能性が高いです。
そのため、相続放棄をした場合でも、空き家が危険な状態にならないように最低限の管理をする必要が出てきます。
しかし、売却したくても買い手がつかず、賃貸に出したくても借り手が現れないような建物に、管理費用を出費しなくてはなりません。
そもそも管理費用の負担を免れるために、相続放棄という選択が頭に浮かんだのではないでしょうか?
更地にすれば売却できるような土地であれば、誰も相続放棄などしませんが。

空き家の管理責任から完全に逃れるためには、相続放棄の手続きだけでは足りず、「相続財産管理人選任の申し立て」もしなければならないのです。
なぜなら、関係者が全員相続放棄をして相続人がいなくなった場合は、家庭裁判所から選任された「相続財産管理人」が遺産を管理する責任を引き継ぐことになっているからです。
相続財産管理人の選任を申し立てるには、家庭裁判所に納める費用がかかることになります。
相続財産の中から相続財産管理人の報酬などを支払える場合ならよいのですが、相続放棄がされているケースでは、そもそも相続財産がマイナスのため、相続財産管理人への報酬などを捻出する余地はありませんよね?
相続財産管理人の選任を申し立てる際には、その報酬や経費に充てるための「予納金」が必要になります。予納金は少なくとも数十万はかかるとされています。
予納金を収めることができないと相続財産管理人の選任を申し立てることはできないので、空き家の管理責任を免れることもできない、ということになります。
ここまで考えると、管理責任を免れるために高額な予納金を納めるぐらいなら、価値がないとはいえいったん空き家を相続して、年間数千円~数万円程度の固定資産税を負担しながら様子を見るという、いってみれば問題解決の先送りという選択をせざるを得ないことがほとんどです。
これが、空家が増えている理由の一つです。

相続放棄の手続き

自分に相続があったことを知った日(被相続人が亡くなったと知った日)から3ヶ月以内(熟考期間)に手続きをしなければなりません。
この期間内に、相続放棄しなかった場合、単純承認といって相続を受け入れたものとみなされてしまいます。後になってやっぱり相続放棄したいと思っても、手続きが認められなくなるケースもあるため注意が必要です。
相続放棄の主な必要書類はといますと..

 相続放棄申述書
 死んだ人の住民票除票、戸籍の附票
 死んだ人の戸籍謄本
 相続放棄する人の戸籍謄本

そして収入印紙が1人に対して800円かかります。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所にて。
ここで注意したいのが、家庭裁判所ならどこでも良いわけではありません。
相続放棄をする家庭裁判所は、死んだ人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所となります。裁判所は支部も含め、各地域に点在していますので、どこの家庭裁判所が管轄になるのかちゃんと確認しましょう。

次は相続放棄の流れです。
相続放棄申述書・上記添付書類の提出
裁判所からの照会に回答
相続放棄受理
相続放棄受理証明書が交付

今回は以上です。

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