相続税の骨董品や美術品の評価はどうなる?

美術品や骨董品は遺産になる?

遺産相続というと、土地や不動産、貯金などがメインの相続財産となります。ですが、趣味として集めていた美術品や骨董品も相続財産に含まれることもあります。
美術品や骨董品の相続を考える場合、法令の中にある財産評価基本通達135条をもとにして考えます。

財産評価基本通達135条
書画骨とう品の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
1.書画骨とう品で書画骨とう品の販売業者が有するものの価額は、133条「たな卸商品等の評価」の定めによって評価する。
2.1に掲げる書画骨とう品以外の書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。

つまり、美術品などは評価により資産的な価値が発生するため、物の相続ではなく相続財産として扱われているのです。
そして、相続財産として扱われる場合、その品物を相続すれば当然に相続税が発生します。
ちなみにうちにも変な掛け軸がありましたが、何の価値もありませんでした…
美術品などの相続では、評価によっては莫大な相続税が課税されることがあるため、美術品などを集めるのを趣味にしている方は要注意です。

では、どのようにして美術品などの評価はどのように決められるのでしょうか?興味がない人から見たらガラクタですからね。

美術品などの価値を決める場合、財産評価基本通達135条にあるように133条に従い、その物品の評価を行います。133条の「たな卸商品等の評価」の内容を簡単にまとめると、美術品などの価値は以下の4点を考慮して価値を定めます。
 同様の物の販売価格
 リサイクルショップの買取査定価格
 古美術商などの鑑定価格
 購入価格
基本的に購入時よりも現在の価格を重視しています。つまり、時価での評価となります。
例えるなら、不動産も価値が変化するので似たような事でしょうか?
例えば、購入時は10万円でも、現在の価格が100万円であれば、100万円の財産を相続することとなり、この金額で相続税が計算されます。もちろん、価値が下がることもあるので、一概に美術品などが相続税の負担を大きくするわけではありません。

専門家に鑑定してもらう必要がある

さて、美術品や骨董品などは時価によって価値が変わりますが、私たちが正しく価値を判定することはできません。
そのため、美術品などを相続する場合は、専門家による鑑定が必要となります。
専門家へ鑑定を依頼する場合、注意したいのが専門分野です。
例えば、美術品といっても、西洋絵画や近代絵画では評価するポイントなどが異なりますし、壺や茶碗などの評価基準は全く異なります。
ですので、鑑定人によっては対応できない場合があるのです。
相続する美術品などが同じ種類のものであれば問題はありませんが、いくつも異なった物品を収集している場合は、なるべく総合的に評価してもらえるところを探して依頼しましょう。
(◯OZOの社長のようなコレクターは相続が大変そうです。)

鑑定費用

もう1点注意が必要なことがあり、それは鑑定費用です。
相続のための鑑定は必要経費とはならず、控除の対象とはなりません。まさかの全額自費となるようです。
鑑定により評価が100%上がるわけではなく、ほとんどが購入時よりも評価額が下がってしまいます。すると、鑑定費用の方が高額になってしまうことも多いです。
したがって、評価の結果にかかわらず金銭的な負担が発生してしまうことをきちんと覚えておきましょう。

鑑定料ってどれくらいなんでしょう。

さまざまな専門店の料金表を確認してみると、絵画や美術品1点あたり30,000円~60,000円ほどで請け負う業者が多いようです。
他に、出張費用等が掛かる場合も。

5万円程度であった場合

美術品などの購入額や相場価格などが数十万円以下の場合は、
わざわざ鑑定を行わずに分割協議にて誰が相続するのかを決める場合もあります。余分なお金を使用しないという点では賢い選択です。
家電製品と同じく美術品なども「家財」として扱われる場合もあります。
この場合は、相続財産ではありませんので相続税の対象とはならない様です。

相続銭は基礎控除と呼ばれる制度があります。基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算され、この控除額以下の場合は相続税が発生しません。
(2014年12月31日以前は5000万円+1000万円×法定相続人の数での基礎控除でしたが相続税が重くなりました)

数百万円レベルの美術品だった場合

購入価格が数十万円程度の美術品や骨董品は、家電や家具などと同じ家財の扱いになります。
これに対して数百万円もの価値ある美術品については、相続税の課税対象となるため、残された相続人にとってガラクタとしか感じられない品物であったとしても処分や売却に気をつける必要があります。
価値を知らずに家族みんなで形見分けなどを行うと、相続税の未申告で税務署から指摘を受けるといった問題が出てくることもあります。
また、古美術商に鑑定をしてもらった美術品に高い価値がない場合であっても、相続人が相続放棄を考えている時には形見分けや処分などを行なってはいけません。
相続人が美術品などの処分を行なった事実が発覚すると、民法921条で定める法定単純承認によって相続放棄が認められなくなる可能性があります。
(勝手に相続財産を処分すると単純相続になること、相続の方法が選べなくなる。)

相続税を申告する場合、美術品などを相続するとそれらの作品名や写真、評価額などの必要書類を用意しなければいけません。ですが、実際に税務署の職員が自宅まで来て調査することは滅多にありません。
じゃあ税務署にはバレないのでは??
と考えると思うかもしれません。
確かに、現物を確認できない以上、所持しているのかを税務署は把握できません。しかし、意外な場所からバレてしまうことがあるのです。
その場所とは、美術品を購入した場所や展示した会場などです。実は、美術品を販売しているデパートや画廊では、誰が購入したのか、所持しているのかを税務署に申告している場合があるらしく。
さらに、税務署には適切な税金を計算するために、こうした情報を調査する権利を有しています。
もし、申告をしていない場合は、税務署の方から連絡があり、再度相続税の申告を促すことや脱税したのではと疑惑を向けられることがあります。

ただ、基礎控除以内の場合や少額な美術品などの場合は追求されないことが多いそうです。
税務署の目的は税収なので少額の課税をしても仕方がないということです。

特例制度

相続する美術品を、自治体が運営する美術館に寄付することで相続税を回避できます。
この寄付は、登録美術品制度(私的に所有・管理されている美術品が、美術館などにおいて公開される機会を促進する制度です。優れた美術品が広く国民に鑑賞されることを目的とした制度。美術品を私的に所有している方は、その所有する美術品の登録を文化庁にすることができ、相続税納税時に特例措置を受けることができます。
具体的には、相続税を金銭で納付することが困難な場合、金銭以外の相続財産で相続税を納付(物納)できますが、その際の優先順位は、第一位:国債及び地方債又は不動産及び船舶、第二位:社債及び株式、第三位:動産、となっています。美術品は原則として第三位の動産に含まれますが、登録美術品については特例措置により第一位となり物納が容易になるという特典が受けられます。)を利用していない美術品でも行うことができます。
ただし、寄付できるのはある程度美術品としての価値があるものだけです。数万円程度の評価となる美術品は寄付できない場合があります。

まとめ

相続にはさまざまな注意点がありますので、美術品の扱いを含めて疑問や不安要素がある場合は、相続問題に詳しい専門家に相談をしながら対応を考えていくのが理想と言えるでしょう。

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